「私どもはこう申し上げました」
「いや違う、お前はこう言った」
「いえいえ、そのようにお伝えしてはおりません」
「いや、お前は絶対言った!」
・・・・
のような言った言わないの話はよく聞きます。
クレーム対応研修の講師をしているので、良く友人や知人からこのようなご相談に乗ります。
このパターンに対する基本応対は「絶対に認めないこと」です。
言った言わないのケースはまず証拠がありません。証拠があれば言った言わないにそもそもなりません。認めてしまうことが即ち「証拠」になってしまうということです。まずは「お待たせをしてしまうことには遺憾ですが、まずは状況を確認させてください。お時間をいただけますでしょうか」とかわしていきましょう。謝罪したら即アウトということを覚えておきましょう。遺憾という言葉は便利な言葉で、謝罪用語ではないのですが謝っている風に聞こえやすい特性があります。言った言わないのケースはこちらが悪いということではないですが、穏便に終わらせたいという気持ちがある方がつい一瞬謝罪してしまいがちです。悪いことは何もしていないのですから、状況をしっかり確認するまでは謝る必要は一切ありません。
状況を確認していくと色々と証言が出てきます。その客観的状況を時系列で並べていくと「この状況でこうなることは考えにくい」といったことに繋がりやすいです。例えば「テーブルに高級時計を置き忘れた。」といったようなケースでは、
7月5日(木)15時頃 お客様が帰られるとすぐにテーブルを片付けて拭いているが、その時に高級時計は確認されなかった。
7月5日(木)17時 アルバイトの退店時に持ち物チェックをしているが高級時計はなかった。
7月5日(木)20時 閉店時に店員2名で退店時の持ち物チェックをしているが高級時計はなかった。
このような経緯報告書を作成すると良いでしょう。
「謝罪文を書け!」というのも良くあるクレームの脅し文句です。こう言うことで皆様に威圧感を与えるための定型文だと思ってください。謝罪文を作成する義務は日本の法律にありません。しかも謝罪の文章ならば認めた証拠になり得る危険性があります。しかし、相手をうまく納得させるためには上記したような時系列で話を並べた経緯報告書を出すというやり方が有効ですので覚えておきましょう。
クレーム対応や不当要求への対応はもちろんケースバイケースですので、どのような件もすぐに判断することが難しい場合も多いです。そのような場合、本日お伝えしたように「まずは謝らないこと」を頭の片隅に置いていただければと思います。