昨年度は全国の県庁や自治体で年間30回ほどクレーム対応や不当要求・ハードクレーム・難苦情対応系の研修を実施しました。
クレーム対応は究極のCS(CUSTOMER SATISFACTION お客様満足)対応と言われています。CSという言葉はおおよそ30年前にアメリカから日本に入ってきた考え方です。
この考えが入ってくる前の日本はまだまだ売り手市場でした。私が小学生の時にガンダムのプラモデルが飛ぶように売れていたのですが、おもちゃ店は不人気なプラモデルをガンダムのものと抱き合わせで販売するといったようなことが横行していた時代です。また、まだまだ物が不足していた頃だと記憶しています。
ところが私が中学の途中から高校生くらいの時期はいわゆるバブルで景気が良くなり、一転して「物に溢れる時代」がやってきました。そのタイミングでCSの考え方が入ってきたこともあり、完全に市場は買い手市場化しました。そこから今まではクレームなど受け付けなかった売り手側がお客様第一主義を掲げて「お客様は神様です」になっていきました。そしてマナー研修やクレーム対応研修が世の中で流行りだしたという流れがありました。
クレーム対応のしかたは30年前の第一段階では「とにかく謝る」ことだったそうです。謝って謝って何とか許してもらうといったやり方です。今ほど権利者意識が強くない時代でしたので、それでも何とかなっていたようです。
そこから10年ほど経つと21世紀に入り、景気の良い時代は終わったことで世の中全体がシビアになっていった結果、単に謝るだけでは通用しなくなってきました。この時代からのクレーム対応は「相手を前向きに受け止め、できるだけご納得をいただく」といったスタイルに変化していきました。
もちろん相手を受け止めていくことはクレーム対応の基本であり今も変わりはありませんが、このやり方をやりすぎた結果一億総クレーマー化につながってしまったと私は見ています。やり過ぎ対応により「カスタマーハラスメント カスハラ(お客様による社員いじめ)」なんて言葉もこの2年くらいで耳にするようになりました。しっかりと相手の感情を受け止め共感するとしても「断るべきことは断る」ということが現在注目されています。
2008年に、昨日当ブログでご紹介しました私の師匠の柴田純男先生を含むメンバーで苦情対応の国際規格であるISO10002が日本に導入されました。JISQ10002を組織に導入することで「国際規格の基準で我々は行動しています。」と明言できることになります。従って不当なクレームに対して「これ以上の対応は規格に基づき対応いたしかねます」といったお断りができるようになったわけです。JISQ10002導入にご興味がありましたらお気軽にご相談ください。
それ以来の約10年、断るべきことは断るという考えについて、柴田先生や私は徐々に世の中に浸透させていく一役を買わせていただきました。
おもてなしは日本人の心であり大事なことですが、大事な職員・社員様を守っていくために「おことわり」していくことも考えていく時代だと思います。お客様満足度を高めることと、職員・社員の皆様が安心・安全に前向きな気持ちで働けるようにこれからもその方法を世の中に広めていきたいと強く思います。