中部地方の自治体や企業で不祥事があると呼ばれてコンプライアンス研修の講師を務めることが多いです。新聞沙汰になるようなことも多いですが、新聞に書かれることは誰がどんな犯罪をして逮捕され、どのような処分をされてというところまでは報道されますが、何が原因であったかということは報道されません。
不祥事を起こした自治体や企業で話を伺うと大抵は職場のコミュニケーションに問題があることが多いです。私の関わってきたケースでは90%以上はここに根っこがありました。
例えば上司からパワハラを受けていただとか、職場のコミュニケーションが悪く仕事のなすり付け合いで全く助け合うといった考えがない職場だったり、チームメンバー同士考えが合わず常にぎくしゃくしているといった状況ばかりです。風通しが悪いということが共通しています。
私はあの監督省庁として最も厳しい金融庁から「コンプライアンスのお手本」と言われるソニー生命出身です。社員と言っても入社2年後はフルコミッション(完全歩合制給与形式)なので個人商店の集まりなのですが、徹底的にモラルとプロ意識を叩き込まれます。また、それぞれが独立しているということもあるのでものが言いやすい世界でした。私は27~31歳をこちらで過ごしましたが、30代後半から50代の方が多かったのでかなり若い部類でしたが、それでも言いたいことは言えました。風土としてこの風通しの良さは大きな特徴だったと思います。
その後、2003年当時東証一部上場最速記録(創業10年)を達成したベンチャー企業、2005年当時マザーズ上場最速記録(創業1年7か月)を達成したベンチャー企業に所属しましたが、2社とも「トップが絶対」のトップダウンの会社で下の者からすると上に物が言いにくい状況でした。前者は数々の不正を起こし事実上廃業、後者は不動産物件について「ババ抜きのババ」物件を多くつかまされ、リーマンショックの打撃を直接受けて上場企業には珍しい破産ということで幕引きになりました。
この2社の終幕の一番の原因は風通しの悪さだったと私は思っています。現場が意見を言いやすい職場であればコミュニケーションは活性化し、不正に目をつぶることなく皆が「悪いことは悪い」と正々堂々言えるようになることでコンプライアンスについても良くなっていきます。風通しの悪い職場は上の不正に目をつむるようになり不正がまかり通ります。
正しく組織を運営する上でコミュニケーションが活性化された職場であることは大変大事なことです。