「お客様は神様だろうが!」と言われたらどう対応しますか。
一昔前なら何とか謝って、なだめてという対応が主流でしたが、「従業員満足度」を高めていかなければいけないコンプライアンス社会である現在においてはしっかりとできないことは出来ないと言っていく必要があります。
「お客様は神様です」は三波春夫さんの言葉として有名ですが、この言葉は独り歩きをしています。本来三波さんは平たく言えば「神様に捧げるときと同じようにお客様の前でも歌う」ということだとおっしゃっており、「神様=お客様ではない」わけです。
当然ですがお客様には何でもするということは有り得ません。私は日本の接遇はぺこぺこと頭を下げ過ぎてきたのではないかと思います。
私が小学生5~6年生だった37年ほど前はまだまだモノ不足で売り手がふんぞり返っていてもモノは売れました。ちょうどガンダムが大ブームとなり、プラモデルが飛ぶように売れたのですが、不人気のプラモデルを売れるものに抱き合わせ販売するといったことが横行していました。それだけ売り手が強い時代でした。
その後、約30年前にお客様満足度(CS Customer Satisfaction)という考え方がアメリカから日本に入ってきました。それまでのモノの不足による売り手市場から、モノが溢れるバブル絶頂期の買い手市場になった時期です。ここからサービス合戦が始まりました。
おおよそ30年くらい前からビジネスマナー研修が売れるようになってきました。私は25年前に社会に出ましたが、新入社員研修でマナーを叩き込まれた初期の世代でした。私の少し上の世代にはそのような研修はなかったという話を聞いております。
その頃はとにかくお客様の言うことは聞けと言われて育ちました。お客様を怒らせて4時間正座させられた挙句にガラス製の大きな灰皿を投げつけられてもひたすら謝りまったといった経験をしました。今なら警察に通報すれば一発アウトの話です。この頃はまだクレーム対応の技術が無かったのでただ謝るだけの時代でした。
20年前くらいからお客様の言い分を受けとめて、なだめていくようなクレーム研修が流行りだしました。この研修は今でも継続していますが、私はこれには功罪があると思っています。
お客様の言い分を聞いて共感し、落ち着かせていき問題を解決するという流れは私が学んでいたカールロジャーズの手法をうまく生かしており、多くのクレーム対応に役立ったもので功と考えます。
しかし、この対応ばかりしてきた結果がモンスタークレーマーやカスタマーハラスメントを生んできたのも事実と言えます。これが罪です。大事な従業員を守るために、不当な要求等には断固対抗することが必要です。
「お客様は神様ではないのか!」に対してはいろんな言い方があると考えますが、基本形はこのような感じでしょうか。
「お言葉を返すようで恐縮ですが、お客様は神様ではありません。お客様なら何を言っても、しても許されるということはありません。お客様はお客様です。当方に神様扱いを求めるならばこれ以上のサービスは提供いたしかねます。」
ある飲食業の方の言葉を思い出します。「お客様は神様ではなく王様としてもてなす。歴史上首を落とされた王様は数多くいるよね。」
お客様は神様ではなく、この言葉を流行らせたいと思います。